お言葉その33 疾走するアジア
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アジアは疾走している。日本も確かに疾走しているのだが、それは国内レ ベルの話であり、無風のドームの中を走っているような気がするのだ。だから、 日本国内にいると外気の動きが分からない。アジアを吹き荒れている変革の風 の匂いを掴めない、というもどかしさが私を不安にするのである。 東京の街を闊歩するサラリーマンを見ていると、温室の中にいることを実感 する。彼らの姿と、将来、日本が衰退した時の失業者の姿がダブって見えるの は私だけだろうか。 私はアジアと連帯していたい。そうしないと次の時代には生き残れない。そ の実感が焦りとなって、私を押し包むのである。 その一方で、日本の底力を信じている部分もある。経済成長下に起きる様々 な矛盾や不安は、日本以上にアジア諸国を襲うに違いない。その時に、はたし て対応できるのか。 アジアは日本を必要としている。日本もアジアを必要と している筈だ。近い将来、アジア諸国は、次々と日本を抜き去っていくだろう。 今からその覚悟をしておかなければならない。 アジアには、アジア独自の価値観と西欧先進国の価値観が同居している。つ まり、全く性格の異なる価値観を持っているのであり、この二重性があたかも 二重螺旋の遺伝子のように、進化を続けているのである。西欧の価値観は行き 詰まっている。しかし、アジアが行き詰まることはない。西欧のような合理的 で論理的な進化ではなく、混沌とした多様性で新しい次元の進化が始まってい るのである。 アジアにはアジアの新しいファッションが生まれるだろう。私は、西欧とア ジアの二つの軸でファッションが生まれることを期待している。ファッション は軽薄なものである反面、人々の意識や価値観に大きな影響を与える。アジア のファッションが生まれることで初めてアジアの意識は独立するともいえるだ ろう。 Tシャツの例でいえば、かつて三宅一生がきもののように、型が輪になって いる(肩線に縫い目のない)ビッグTシャツを発表したことがある。これは肩 の傾斜がないから、文字通りのTシャツである。また、中国製の安物のTシャ ツにも、同様のデザインを見たことがある。 アメリカのTシャツは胴体が筒になっており、脇に縫い目がない。アジアの Tシャツは、肩に縫い目がなく脇に縫い目があるのかもしれない。
![]() OPEN! 坂口 昌章 VEA00603@niftyserve.or.jp 1957年東京生まれ。 シナジープランニング代表盛上げ役兼シナジーネット元締。 ファッションに関することを、喋る、書く、企画する、偉そーにする等が仕事。 織物産地、小売店、アパレルメーカー、下町、居酒屋等に出没。 |
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